マン

マンの特徴

MANは名前だけ聞くと英語圏の会社という印象がありますが、実際はミュンヘンに拠点を置くドイツの自動車メーカーです。エンブレムは、シルバーのMANの文字の上にアーチがかかったマークです。大型トラックメーカーとしてヨーロッパ圏で大きな知名度がありますが、大型トラック以外にも、船舶のディーゼルエンジンやターボエンジンなども手掛ける総合技術メーカーでもあります。 MANは自動車メーカーとして創業したわけではありません。1758年、製鉄所として創業し、時代の変遷に合わせて柔軟に事業を展開してきました。鉄橋の建設、印刷機の作成、ディーゼルエンジンの開発、そして1932年になってはじめてトラクターを世に送り出します。 自動車の歴史は、ドイツの技術者の奮闘の記録そのものです。ダイムラーはドイツ最高の自動車、マイバッハはドイツ最強のエンジン、フォルクスワーゲンはドイツで最も親しまれる国民車を開発しました。強豪の中にあって、MANの揺るがないアイデンティティは技術の広さにあります。 第一次世界大戦で敗戦国となったドイツは国民総生産20年分という、非現実的な額の賠償金を請求され、国内は失業者であふれかえりました。不況著しい時勢において、MANのエンジンは軍事潜水艦の標準装備に採用された他、戦車や銃器も生産し、多くの企業が倒産してゆくなか政府の庇護を受け生き残ります。国家社会主義のもと急速に軍備を進めていたドイツで、軍需を獲得したMANは急成長、急激に規模と技術力を膨らませてゆきました。戦後に入って財閥解体などの動きを受けて、自動車部門が会社化、現代のMANが形を表しました。 2011年になって、フォルクスワーゲンがMANを買収します。「ヨーロッパ最大のトラックメーカーを作る」との野望のもと、フォルクスワーゲンがMANとスカニアを吸収、部材調達の最適化で年間4億ユーロの節約を計画していました。現在ヨーロッパにおけるトラック市場の覇者はメルセデスベンツを擁するダイムラー社ですが、MANグループがその牙城を崩す日はそう遠くないのかもしれません。 欧州圏での環境規制が厳しくなり、MAN最大の強みであるディーゼルエンジンは今後斜陽産業となることが明らかです。プレスリリースでは技術開発系の情報発信が見られず、中長期的には厳しい展開が予想されます。EVの開発や自動運転技術では、世界最大トラックメーカーグループ・ダイムラーに後れをとっていますが、背後に控えるフォルクスワーゲンが技術注入を施せば、まだ巻き返しは可能でしょう。